このクーパースタウンのワックス博物館の特徴は、地下にある、制作工程の
説明です。
どうやって、人形を造り出すのか、その展開を克明に解説しているのです。
まず、写真を土台に原画を作成。人形のモデルへと進み、ワックスを整えて、
型に流し込み、さらに、髪、目、鼻、口を細工、衣装を着せて、ペインティング。
一目で行程が分かる仕掛けです。このような、具体的な解説は、サンフランシスコ
のワックス博物館にはなく、このガラスウインドー2パネルの展示は、いい企画
だと思います。
首、手、腕、胴体、足は別々に制作。合成して仕上げ、いずれの作品も、生きている
ような、見事な出来映えでした。
ユニークなのは、ピート・ローズの殿堂入り会見展示でした。
袖なしユニホーム姿のローズが、壇上であいさつしている構成ですが、
ローズは禁じられている野球賭博に手を出し「野球殿堂入りはできない」と、
永久追放の身。しかも、クーパースタウンとは目と鼻の先の場所で、何とも
皮肉な人形ではありませんか。ローズの最多安打の偉業を伝える数々の
写真も2ブロックに渡り展示されています。この博物館では、よほど、ローズ
の追放が惜しいのか、どういう意図なのか、不明の展示なのです。
それに付いての解説も付いていません。
騎馬で3000本安打達成の瞬間を構成しているのは、ヤンキース時代の
ウェド・ボッグス内野手です。騎馬警官の馬に同乗して、ファンの歓呼に応える
構図ですが、その背景に、実物大の警官を配置し、さらに、その後方に
当時のシーンの写真も掲げています。
警官が手綱を取る栗毛の馬、その皮膚の輝き。左手を天に突き上げ、
喜びのボッグス。本当に当時の記録誕生のシーンを思い浮かべます。
ローズと同じように、2ブロックの展示は、飛行機事故死した、ヤンキース
のサーマン・マンソン捕手です。完全装備でベンチに座る姿。
背後には当時の写真が多数展示され、「貴方もここに立って、マンソンと
一緒の写真を撮りませんか」と、いう案内もあります。
1976年から3連覇したときの主将。シーズン途中の1979年8月2日、オハイオ州
カントンの上空で自家用飛行機の事故で亡くなりました。ヤンキースは突然、
チームの中心スターを失い、ファンは悲しみました。
その情景を思うわせる展示でした。
了
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