クーパースタウンのワックス博物館は「アメリカン・ベースボール・エキスペリアンス」
と、最初にPRが付くだけに、このビル全体の構成は、単に人形を展示しただけではない
のです。
入り口奥のエレベーターで3階へ(かなり旧式で運転もゆっくり)上がると、迫真の
展示作品は、ヤンキースタジアムを背景に、居並ぶヤンキース・ナインの視線を背中に
劇的なサヨナラのあいさつをする、ルー・ゲーリッグ一塁手の頭を垂れた姿です。
1939年7月4日の独立祭。ヤンキー・スタジアムで行われた「ルー・ゲーリッグ・デー」
で、「今日、私は、この地球上で、一番幸福な男、と思いました」と、マイクから流れる
声に、満員のファンは泣きました。
本当に、歴史的な別れのあいさつでした。その舞台が精密に再現されています。
「もう、プレーできない」と、命をむしばむ筋萎縮症にかかり、自分で打順から名前を消した
5月2日から、最後の舞台をヤンキースは7月4日にセットしました。以後、ゲーリッグは
もう、姿を見せることはありませんでした。1941年6月2日、ゲーリッグはついに、
この世を去りました。
「ルー・ゲーリッグ病」と、言われる難病は、今も研究が続き、この研究機関も
発足しました。
2130試合連続出場の大記録を作り、不死身の鉄人、と言われ、ヤンキース
の黄金時代を築いたゲーリッグ。そのラストの言葉が、当時の録音でそのまま
再現され、このゲーリッグのセットの天井から流れてきます。
「すべての展示は歴史的事実を忠実に考察しました」と、説明があります。
まだまだ、驚く展示があるのです。
了
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