フィリーズ・ナインの左胸のマークに注目してください。
丸の中に「HK」と縫う文字。これは「フィリーズ・ボイス」と、ファンに絶大な人気
があった、実況アナウンサー、ハリー・カラスさんのイニシアルなのです。
カラスさんは1971年からフィリーズのアナを始め、38年間も欠かさず試合
中継を担当。ナインを激励し、巧みな描写でファンを取り込み、フィリーズでの
実働29年。その情熱がマイクから感じ取れるアナでした。
しかし、カラスさんは、今年4月13日、ワシントンでナショナルズの開幕戦が始まる直前、
放送室で急死。帰らぬ人になったのです。73歳。心臓発作。頑健な体で
不死身のように思われたいたカラスさんも、激務は、いつか、体をむしばんだ
のではないでしょうか。
ナショナルズは、伝説アナの死を悼み、その日の試合中止を検討したほど
でした。その放送の功績から、2002年、クーパースタウンの野球殿堂入り。
「フォード・フリック賞」を受賞。フィリーズの野球殿堂入りもしています。
フィリーズは、カラスさんが着ていた淡いブルーのジャケットをダグアウト中央に吊し、
当日の白シューズも供えて「”ハリー・ザ・K”のために闘おう」と、ナ・リーグ2連覇を
達成。センターの外野看板にも、HKのイニシアルと似顔をペイントして
ナインを励ましました。
ヤンキースに王手を掛けられながらも、第6戦へ持ち込めたのも、HK
の無言の激励「最後まで諦めるな」が後押ししたに違いありません。
長男のトッドさんも、アナ修行を続け、今は10年を超えるレイズの担当アナ。
父の急死の報にフィラデルフィアへ駆けつけたとき、無数の献花を見て
「父がこれほど、ファンに愛されていたとは」と、絶句した、と言われています。
エンゼルスも開幕日の自動車事故死したアイデンハート投手のユニホーム
をダグアウトに掲げ、惜しくもヤンキースに敗れましたが、チームの団結は
さらに高まった、と言われています。
フィリーズが敵地、ヤンキー・スタジアムで奇跡の逆転優勝を飾るか、
天国のカラスさんは「あと一息だ」と、激励のエールを送り続ける、と信じています。
了
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