1988年10月15日。快晴の青空が目にしみるドジャー・スタジアム。
9回表、4-3と、アスレチックスがリード。「カンセコがヒーロー会見します」
と、すでに発表され、メデイアは、地下のインタビュー・ルームへ
集まっていました。そのとき。「ワッ」と挙がる大歓声。
「何があったんだ」と、どよめくライター。「ギブソンが代打逆転2ランした」
と、聞いたときは「何故?何でギブソンが打てるの?」と、みんな
耳を疑いました。
ギブソン外野手は、足の故障で、閉幕前からプレーして
おらず、この日も、トレーナー室で、ずっと治療を受けていたはず。
相手は、当時、全盛のクローザー、デニス・エッカーズレー
投手。満足な体でない、ギブソンが打つはずはない、
と、信じていた記者たちは、驚きで声もなかった、のです。
9回、交代した、エッカーズレーは、簡単に2人を凡打。
ところが、代打のW・デービスを歩かせたのが失敗の
始まり。ギブソンは、フルカウントまで粘り、右翼へ打ち
込んだ、のです。
ワールド・シリーズ史上、9回裏、代打逆転サヨナラ2ランは
初めて、でした。
ギブソンは、出場したのは、この1打席だけ。あのときは、
痛み止めの注射を打ち、その瞬間だけ、スイングできる
ように、治療していた、のでしょうか。
この、何故、打てた?のナゾは、ついに、分からないまま、でした。
「言い訳はしない。カーブが思うようにいかなかった。
もう一度、投げたら、速球で押した、だろう。彼は、足
が悪いのだから。でも、私のミス」と、唖然とする、エッカーズレー。
この日、2回表、カンセコがセンター後方のテレビ・カメラ
にぶつける、すさまじい満塁本塁打。この弾丸ライナーは、今でも、
はっきり、覚えています。カメラは衝撃だ倒れました。両手を挙げる、
ショックのカメラマンの姿も。しかし、カンセコは、このシリーズ、
安打したのはこの1本だけ。あとは、ノーヒット、とは。
アスレチックスは、この第1戦の負けは大きく、1勝4敗の惨敗に終わりました。
ところが、ドジャースも、この年が最後。以後、一度も、
ワールド・シリーズに出ていない、のです。
こういう、ハプニングの連続。だから、メジャーは面白い、
とも言える、のではないでしょうか。
了