松原 明の大リーグ

キャンプ地ガイド１１、メッツ

メッツはフロリダ州東海岸の真ん中にある「ポート・セントルーシー」で23年連続キャンプ

を迎えます。

ここは土地開発で誕生した新興都市。人口は急激に増え、今は15万１３９１人の住民

が住んでいます。年間を通じて温和な気候（3月の平均気温は２６・１度）。

目の前は青い海。その環境の良さで人気上昇の都市になりました。

しかし、再三ハリケーンにやられる危険地区なのです。２００４年に2回、２００５年

にも1回被害に遭いました。キャンプ期間中はハリケーンの季節ではないの

で、多分大丈夫です。

メイン球場は「トラディション・フィールド」。収容７０００人。南国風の正面広場が広がり、

高速９５号線ともつながり、交通は便利です。昔は「トーマスＪホワイト・スタジアム」

と言っていましたが、今はこの土地開発社の支援を受けて、全面改修、新ネイミング

で運営。このキャンプ地全体は「セントルーシー・カウンテイ・スポーツ・コンプレックス」

が正式名称で、多くのキャンプ施設が展開しています。

キャンプ参加メンバーは６７人（招待選手２３人）の激戦。今季の加入大物は

レッドソックスからＦＡ入団のジェイソン・ベイ外野手。デルガド一塁手が

去ったあとを埋める大物です。五十嵐投手も入団しました。

オープン戦はすでに2日に開幕。4月1日でセントルーシーを打ち上げ、

2日にトロピカーナ・フィールドでレイズと対戦、3日はオリオールズと試合後、

開幕に備えます。マーリンズ、カージナルスと各7試合が一番多く、次いで

ナショナルズの6試合です。

昨年、プレーオフどころか、首位に２３ゲーム差も附けられ、4位がやっと

の不振。巻き返しはできるのかどうか。まだ？のままです。

了

キャンプ地ガイド10、カージナルス

ベースボール・アメリカ誌が毎年発行している「グレート・パークス・カレンダー」は

マイナー・リーグの野球場を毎月載せている、いいガイドですが、２００７年2月に

この「ロジャー・ディーン・スタジアム」の航空写真全景が紹介されています。

まさに上から眺めるスタジアムは壮観です。

メイン球場の背後には、左右に4面ずつの練習フィールドが展開。さらに、各2面

の練習場が配置され、これだけの広大な施設は、まさに、フロリダ一番でしょう。

メイン球場のセンター後方左右には、両球団のクラブハウスが設けられ、

室内練習場、トレーニング・センターも完備。宿泊施設もあります。

フロリダでこんな広々としたキャンプ地は他にありません。

駐車場も十分なゆとりがあり、椰子の木が茂り、南国風景は鮮やか。

1998年にジュピター・スポーツ・コンプレックスは完成。カージナルスは、

マーリンズより早くここに定め、今年で１３年目を迎えます。

昨年のオフから、ウェルマイヤー、トンプソン、ピネイロ、スモルツの４投手、

デローザ、グラウス、グリンの３内野手、アンキイル外野手のレギュラー・クラス

を放出。新加入はほとんどなく、昨年とほぼ同じ陣容で臨みます。

ＦＡ宣言した4番のマット・ホリデー外野手との長期契約に成功。

これで、3番・アルバート・プホルズ一塁手とのパワー・コンビは崩れません。

１９勝のウェインライト、１７勝のカーペンター両投手、３８セーブ

のフランクリン投手も健在です。

オープン戦はメッツと７試合、マーリンズと6試合に集中。リーグ王者のフィリーズとは

対戦しません。4月1日のマーリンズ戦でジュピターを切り上げ、ツインズの招き

で新球場「ターゲット・フィールド」のこけら落としで、4月２、３日、ミネアポリスへ

飛びます。中地区では抜けている不動の陣容のカージナルスとは注目のカードです。

薬物使用違反の罪を認めたマーク・マグワイア新打撃コーチは、背番号「２５」

のユニホーム姿で現場に復帰しましたが、ミズーリ州議会は、セントルイス市内

を縦断する高速７０号線に附いていた「マーク・マグワイア・ハイウェー」の名

を削除し、郷里の作家「マーク・トウェイン」の名に付け換えることを決めました。

「薬物使用が明らかになった以上、変更しなければならない」と、満場一致

の議決でした。マックはノーコメントの沈黙でした。

了

キャンプ地ガイド９、マーリンズ

フロリダ東海岸は、いつも台風の通過道で、しばしば、ハリケーンの被害に出会います。

最近では２００４年、ジェーンが襲い、大きな被害を受けました。

東海岸地区の南、ジュピター市には、カージナルス、マーリンズの２球団が合同キャンプ

を続けています。

両球団が交互に使用しているメイン球場は、ロジャー・ディーン・スタジアム。

収容７０００人。右翼には家族の遊び場、ピクニック・ランドがあり、外野席はナシ。

外野後方には練習用の広大なフィールドが広がり、２球団の合同キャンプにも、何ら

支障はありません。

フロリダで２球団が共同使用のキャンプ地はここだけです。

ギリシャ神話の最高の神「ゼウス」にちなんで付けられたこの土地はカージナルス、

まーリンズともにワールド・シリーズ優勝の歴史を誇り、

アメリカ・ジュニア・五輪大会の舞台でもあります。

総工費２８００万㌦（約２億５０００万円）で建設され、マーリンズは８年目になります。

カージナルスとはここで５試合対決。同じ東海岸で近いポート・セントルーシー（メッツ）

とは最多の６試合組まれています。

４月１日、ホームでカージナルスと対戦のあと、ジャクソンビル、グリーンズボロ

のマイナーと対戦。引き上げます。昨年、打率・３４２、２４本塁打、１０６打点の

大活躍したヘンリー・ラミレス遊撃手は、今季も元気。３１本塁打のウグラ二塁手

とともに健在の姿を見せ、楽しみなコンビは今年も期待がもてるでしょう。

（了）

キャンプ地ガイド８、パイレーツ

フロリダ西海岸の最後はパイレーツです。

キャンプ地は「ブレイデントン」（研究社発行、アメリカ地名辞典）。タンパ湾の衛星都市

で、セントピータースから延びる「ザ・サンシャイン・スカイ・ブリッジ」を渡ると到着

します。この橋は全長８・９㌔。青く澄んだ海を突っ走る爽快感は素晴らしい、

と言われています。橋の一番高いポイントは７６㍍。高度差がある豪快なドライブを

楽しむ人も多いようです。

隣のサラソタ市とは双子都市。目の前はサラソタ湾。そこに細長い半島が

横たわり、いわば内海になっているので、穏やかな気候風土の、とてもいい環境です。

柑橘類の産地で有名で、トロピカーナ社の生産で、オレンジ、グレープフルーツ

などの果物の名産地。冬のリゾート地でも定評があり、1842年に町が誕生、

１９０３年に市になってから１００年余の歴史があります。

パイレーツはここにキャンプ地を設けてから４２年間も続ける長い歴史があります。

ブレイデントンは「パイレーツ・シテイ」と名付けられ、スポーツ施設は充実しています。

スポーツ用具「チャンプ」の基地があり、ここには、多くのテニス・スターが

生まれ、テニス・タウンでも有名です。

メイン球場は「マッケニー・フィールド」。収容６５６２人の小さい球場です。

今季はレイズから岩村二塁手が加入。すでにオープン戦にも出場。

新天地での期待も持てます。背番号は「３」。

支配下選手４０人以外の招待選手２６人中、投手は１８人も参加。投手陣

再建へ新戦力を求めています。

オープン戦は32試合（ホーム１５）。フィリーズとは最多の６試合。

ブレイデントンは3月２９日で打ち上げ、最後はフィラデルフィアでフィリーズと

2連戦。開幕に備えます。休日は3月１６、２２日の2日だけ。

最下位を脱出できるかどうか、若手の奮起を待ちたいパイレーツです。

了

キャンプ地ガイド、その７、タイガース

タイガースはフロリダ半島の真ん中、レイクランド市で６５年目のキャンプを迎えました。

こんなに長く同じ地区を動かないチームはタイガースだけです。

地図を見ると、半島を横切るハイウェー４号線の大動脈が走り、その中間３３出口で降りれば

約３㌔でレイクランドに到着します。東地区へも、西海岸にも、どちらにも自在に行ける

便利さがあるからではないでしょうか。

その名の通り、湖が多く、球場の目の前は大きなパーカー湖。右中間スタンド

から湖の風景が眺められます。

キャンプ地全体は「タイガー・タウン」と呼び、メイン球場は「ジョーカー・マーチャント・

スタジアム」。長年、市のリクリェーション担当だった、マーチャント氏のネイミングですが、

同氏が明るい道化役者だったので”ジョーカー”が附いた、とも言われています。

タイガースは１９４６年から使用。その前、１９３４年から８年間もここを使って

いましたから、大変な長期キャンプです。

当初は「ヘンリー・フィールド」の名前でした。３回の大改修を経て、最初は４９００人

だった球場は、今は９０００人収容、約倍増の規模になりました。

１９７２年にはナイター照明も付き、十分な施設です。

昨年、地区１位でプレーオフ出場目前だったのに、最終日にツインズに抜かれ、

無念の２位転落。すべて台無しになった悔しさを乗り越えようと、チームは大改造。

グランダーソン、テームス外野手はヤンキースへ、ポランコ二塁手はフィリーズ、

ジャクソン投手はダイヤモンドバックスへ移り、心機一転の再スタートです。

アルコール中毒に悩まされた４番・カブレラ一塁手は「もう、酒は絶ちます」と

カウンセリングから立ち直りる姿に注目です。

支配下４０人、招待１３人でベンチ入りを争います。

オープン戦は３５試合（ホーム１６）。休日は３月２４日の１日だけ。レイクランド

は４月１日で切り上げ、２，３日とブリュワーズのホーム、ミラー・パークで２試合。

開幕へ備えます。リーランド監督は「チームはすっきりした。みんな輝いている。

やれる自信はある」と、断言しています。

レイクランド市は日本の今治市と姉妹都市。ともにかんきつ類の産地なのが

共通しているのでしょうか。

（了）

キャンプ地ガイド、その６、ブルージェイズ

ブルージェイズは今春もフロリダ州西海岸の「ダニーディン」でキャンプを続けます。

ここはタンパ弯を取り巻く一角で、クリアウォーターのすぐ北。ハーバー・アベニュー

の道路に面した内海の前にあります。「アメリカ地名辞典」（研究社刊）によりますと、

ここはスコットランド移民が開拓した土地で、「ダニーディン」とは、彼らの母国、スコットランド

の中心都市、エディンバラ（この名をゲール語で発音すると）に由来する名前だそうです。

土地の中学、高校にはスコットランドの名物、バグパイプの音楽部があり、いつも、

代表的な楽器、バブパイプの演奏が響いてくる、とも言われています。

球場は同市の公立図書館の側に建っています。

メイン球場「ダニーディン・スタジアム」は収容５５０９人と小さいのですが、歴史は古く、

ブルージェイズはここで１９７７年から連続キャンプ。実に３４年目のシーズンに

なります。

昔は「グラント・フィールド」を名乗り、最近は「ノログ・パーク」とも、言われていました。

やや北にある「ボビー・マトリック・トレーニング・センター」と練習内容によって

使い分けています。

招待選手は２５人。支配下選手は４０人。捕手が１人しかメジャー契約選手が

いないため、昨年、ヤンキースで控えだったホセ・モリナを採用しました。

何といっても、長い間右腕エースで君臨していた、ロイ・ホラデー投手が

フィリーズへ去った痛手が大きいのではないでしょうか。

ブルジェイズは「交換でフィリーズから若手有望株が来た。彼らを

成長させれば秋には大丈夫」と、強気ですが、若手ばかりの先発組では

東地区の激戦を勝ち抜くのは無理ではないでしょうか。

オープン戦は３０試合。お隣のタイガースとは交流が多く、７試合も対戦します。

休日は３日あります。アストロズとも５試合ありますが、４月１日に打ち上げたあと、

ヒューストンへ飛んでアストロズとの２連戦で開幕へ備えます。

（了）

フェラー投手のノーヒットノーラン７０周年

シカゴ野球博物館のＥメールニューズ「ライン・ドライブ」の最新号が届きました。

４月6日（火）、シカゴでボブ・フェラー投手の史上初の開幕日ノーヒット・ノーランの

快挙７０周年イベントを開催する、と同博物館は発表しました。

１９４０年4月１６日、旧コミスキー・パークでフェラー投手（インディアンス）は

ホワイトソックスを１－０で完封。三振８個を奪い、エラーと四球５個の走者以外

は寄せ付けませんでした。

その日のシカゴは気温８度の寒さ。両親、姉が声援を送る中、見事な完封劇でした。

6日はホワイトソックスは休養日。フェラーさんも招待を受けてシカゴに来ます。

この１９４０年は２７勝の最多勝、三振奪取２６１個、防御率２・６１（いずれも1位）

で”投手三冠王”でしたが、ＭＶＰは本塁打、打点王の２冠王だった、ハンク・

グリンバーグ（タイガース）に輝き、選ばれませんでした。

当時はまだ「サイヤング賞」は設定されておらず、もし、あったら、文句ナシに

受賞したでしょう。

フェラー投手は3回もノーヒットを達成していますが、2回目の１９４６年4月３０日

は旧ヤンキー・スタジアムで初めてヤンキースがやられたノーヒット、という

歴史的な記録でした。

通算２６６勝１６２敗。１９５６年に現役引退。１９６２年にはすぐクーパースタウン

野球殿堂入りしています。

驚くのはその長寿です。１９１８年１１月3日、アイオワ州バンミーター生まれの

フェラーさんは９１歳なのです。それでも、毎日、孫を相手に、キャッチボールを

やる元気さ。昨年に続いて、今夏もクーパースタンに出かけて、

記念試合の先発する予定、と言うのですから、その不死身さには、ただ、驚く

ばかりです。

６日の当日は関係者も集まり、祝典を開きますが、フェラーさんがどんなスピーチ

をするのか、楽しみにしています。

了

キャンプ地ガイド、その５、フィリーズ

タンパベイ・レイズはすで「新キャンプ地」で紹介しているので、フロリダ地区の

ナ・東地区チームへ行きましょう。

王者・フィリーズがクリア・ウォーターで１９４７年から続けています。

もう６０年の歴史がありますが、今のメイン球場「ブライトハウス・ネットワーク・フィールド」は

新設されたスポーツ施設で今季で１０年目。収容８５００人。高速１９号線に面した

場所にあり、球場正面には噴水が上がる公園広場。ファンが楽しめる広々と

したエントランスになっています。

支配下選手３８人、招待選手２０人で争うベンチ入りですが、すでに、主力メンバー

はほとんど確定。いわば不動の陣容で3連覇へいどみます。

開幕予想オーダーも決まっています。

1番ロリンズ遊撃手、2番ポランコ三塁手、3番アトレー二塁手、

4番ハワード一塁手、5番ワース右翼手、6番イバネス左翼手、７番ヴィクトリーノ

中堅手、8番ルイス捕手。新たにタイガースから加入してポランコが入り、

2番だったヴィクトリーノが７番に下がる以外は全く変わりません。

まさに円熟の打線です。

昨年のプレーオフで活躍した左腕、クリフ・リー投手がマリナーズへ去りましたが、

ブルージェイズから右腕エース、ロイ・ホラデーが加入、フィリーズのオープン戦

開幕戦、3月4日のヤンキース戦（ホーム、デーゲーム）の先発に決まりました。

先発ローテ５人もほぼ決まっていますが、不安だった救援陣も、故障から

立ち直るクローザーのリッジ、ロメロもリハビリは順調に進み、開幕に

間に合うようです。

クリアウォーターはその名の通り、息を呑むほど美しい白砂の海岸が続く

青く澄んだ海の綺麗な眺めは最高です。特に夕日の沈む風景は素晴らしい

の言葉に尽きます。タンパ空港を出てセントピターズバーグへ向かう高速道路は

海の中を走る爽快さが忘れられません。

クリアウォーター市（人口１０万８６８７人）は名古屋市と姉妹都市提携しています。

ヤンキースのタンパとは目の前。この湾全体は交通便利で、とてもいい環境です。

オープン戦は３２試合。休日は3月１８日の一日だけです。

昨年、ワールド・シリーズを争ったヤンキースとは５試合（ホーム３）対戦します。

フィリーズはクリアウォーター・キャンプを4月1日で切り上げ、

２、３日はフィラデルフィアへ戻り、シティズンズ・バンク・パークパイレーツと

最後の2連戦で仕上げ、開幕に備えます。

了