ナショナル・リーグ・シリーズは、フィリーズ(東1位)と、ドジャース(西1位)
の対決に決まり、9日(木)からフィラデルフィア市シティズンズ・バンク・パーク
で開幕します。
フィラデルフィアでリーグ・シリーズを行うのは、1993年のフィリーズ対ブルージェイズ
のワールド・シリーズ以来、15年ぶりのことです。球場は昔のベテランズ・スタジアム。
まだ、NFLと同居していた時代です。
あの年、私は両都市に取材に行きましたが、当時は、まだ、日本人記者も
ほとんど来ておらず、「日本から?何しに来た?」という調子で、やっと席をもらうほど
大変な扱いでした。
フィリーズが2勝3敗と、王手を掛けられて、フィラデルフィアから、トロントへ行く
途中の飛行機の中。私の隣に来たのは、大男のフィリーズ・ファン。彼は
私がブルージェイズの帽子をかぶっていたのを見るや「お前は、トロント・ファンか!
キル!」と、大声で脅迫しました。
「こんなところで、脅かされるのは困る」と、ひたすら体を小さくして「早く着いて
くれないかな」と、祈るばかりでした。以後、シリーズ取材のときは、どちらの
チームの帽子もかぶるのは避けるようにしました。大男は、別に何もしませんでしたが、
やはり熱狂ファンは何をするか分からないので怖いです。
第6戦、ブルージェイズは、ジョー・カーター外野手のサヨナラ・アーチで優勝。
左翼の臨時記者席の目の前にあるブルペンの中に打球は吸い込まれました。
高く上がる白球を目の当たりにして、外野席の地元ファンは全員バンザイ。
興奮の中、「あのフィリーズ男はどこに?」と、一瞬思い出しましたが、満員の中、
分かりませんでした。
翌朝、宿舎のヒルトン・ホテルの、エレベーターの中で、フィリーズの
ジム・フレゴシ監督とばったり出会いました。「日本から来ました。残念でした」
と、あいさつすると、大男のフレゴシ監督は、負けた無念さか、
無言でうなずいただけでした。
この年、2勝4敗でブルージェイズに敗れたフィリーズは、王座に就いたのは、
1980年(ロイヤルズに4勝2敗)が最後です。実に28年ぶりに迎える、チャンピオン
のチャンスなのです。あのときのフィリーズ男は、どこで祈っているでしょうか。
了
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